不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法(不特法)に基づいた不動産投資の仕組みです。本サイトでは、不動産クラウドファンディングの特徴・メリット・デメリットをご紹介しつつ、具体的な不動産クラウドファンディングを提供するサービスをご紹介しながら、どのような投資家に不動産クラウドファンディングが、おすすめなのか、解説します。
目次
不動産クラウドファンディングの特徴
不動産クラウドファンディングは、以下のような特徴を持った不動産投資の仕組みです。
- 小口化された現物不動産への投資が可能
- 優先劣後構造等により投資家側のリスクを抑えたファンド設計が可能
- ファンド運営をするためには不動産会社は国交省もしくは都道府県からの許認可が必要
小口化された現物不動産への投資が可能
いわゆる不動産投資と言われるものでも、色々な種類の不動産投資が世の中にはありますが、投資対象の不動産をサイズ毎に大別すると、以下のようになります。
- ビル、マンション、アパート一棟
- ビル、マンション、アパートの一部屋
- 上記を小口化したもの(不動産小口化商品)
一棟ものは比較的価格が高く、ビルは数百億円するようなものもありますし、中古のアパートでも一棟となると数千万〜数億円以上という価格感で、一般の人には中々手が出しにくい領域です。
都心のマンション一部屋投資も盛況ですが、価格の妥当性のジャッジや数十年の長期にわたって物件価値を維持できなければトータルで利益を得られないことも多く、こちらも比較的、難易度が高い投資と言えるかと思います。
不動産クラウドファンディングを含む、不動産小口化商品は、対象不動産(ビル、マンション、一軒家など、不動産であれば何でも)の一部の権利を複数の投資家で共同で購入することができる仕組みです。不動産小口化商品の中でも一般的なREITがありますが、以下のように特性の違いがあります。
REIT |
不動産クラウドファンディング |
|
対象不動産 |
複数の不動産をミックスしたものを小口化 |
単一不動産の小口化が大半 |
上場/非上場 |
証券取引所に上場 |
証券取引所に非上場 |
価値変動 |
物件情報が見えづらいため、価格が景気に左右される |
単一不動産に紐づくため、不動産資産特性を持つ(インフレに強い、景気に変動されにくい) |
優先劣後構造等により投資家側のリスクを抑えたファンド設計が可能
上記では、不動産クラウドファンディングが、「単一不動産に紐づいた不動産小口化投資商品」であることを解説しました。
それでは、そのような不動産クラウドファンディングの投資特性はどのようなものになるでしょうか?
具体的に以下の例(架空の例)で考えてみましょう。
上図はどういうことかというと、具体的な不動産として、渋谷区の新築のマンション一棟(仮に10億円とする)を、不動産クラウドファンディングを運営する不動産会社が、不動産クラウドファンディングで投資家から全体50%の5億円を集めるという場合の図になっています。
投資家は、匿名組合契約を不動産会社と締結し、出資することで、匿名組合出資持分として、この不動産の収益を得る権利を一部得ることができます。得られる権利の割合は、出資割合(何口投資するか)により変動します。最低投資額も比較的低く、不動産クラウドファンディングの場合、最低投資額1万円から投資可能としている不動産事業者もいます。
自己出資20%とはどういうことかというと、不動産会社自身が全体の20%である2億円を自らが出資するということです。
匿名組合出資部が優先出資、自己出資部が劣後出資となっていますが、先に損失を負担しなければならないのが「劣後出資者」となります。優先出資者は、仮に損失が発生した場合においても、劣後出資額内に損失額が収まれば、元本が減少することはありません。
この例の場合は、劣後出資部の2億円分以上が棄損しない限り、投資家の元本は減少しないという仕組みとなっています。このような投資家のリスクヘッジの仕組みが、初心者に不動産クラウドファンディングが、おすすめされる理由の一つです。
ファンド運営をするためには不動産会社は国交省もしくは都道府県からの許認可が必要
不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法(不特法)という法律に基づき、ファンドを作って投資家を募るには、国交省もしくは都道府県からの許認可が必要となっています。
この許認可のプロセスでは、事業者の財務状況の確認(許認可を受ける不動産会社の財務的安定性を確認するため)であったり、会社の体制の確認(不動産ファンドを運営する能力があるかどうかの確認)などが実施され、見事パスした事業者のみが運営することができます。
不動産クラウドファンディングは、オンバランスであり、ファンドを運営する会社が潰れてしまった場合、物件の状況に関係なく元本が棄損するリスクをはらんでいますが、許認可制にし財務状況もチェックすることでそのリスクを低減した仕組みとなっています。(国交省、都道府県の審査を通過した事業者が運営しているファンドという安心感が得られる)※1,2
※1:ファンド規模の制限がある、小規模不動産特定共同事業については、この限りではない
※2:不特三号、四号事業はオフバランススキームだが、現状一般的でない
不動産クラウドファンディングの、おすすめ投資準備戦略
不動産クラウドファンドの投資準備戦略としては、「複数の不動産クラウドファンディングサイトに登録し、新しいファンドがアナウンスされるのを待つ」を、おすすめします。
不動産クラウドファンドの募集方式は、先着式と抽選式があります。
先着式は、募集を開始してから数分で満額調達となり募集を停止することが多く、また募集の周知をするのは、募集開始の数日前であり、そこからサイトに会員登録をしても登録の承認が募集開始までに間に合わない場合があります。
(不動産クラウドファンディングサイトで投資の申し込みをするには、サイトでの本人確認の手続きを完了させる必要があり、通常数営業日かかります)
投資したいというファンドの募集が発表されてからサイトに登録しても、ファンド募集開始までに登録完了が間に合わない可能性があるため、「予め複数のサイトに登録しておき、魅力的なファンドの募集がアナウンスされるのを待つ」が、おすすめなのです。(不動産クラウドファンディングサイトに会員登録すると、新しいファンドの募集開始前に登録メールに通知が届くようなサービスにしている事業者が多いです)
不動産クラウドファンディングサイト
以下、代表的な不動産クラウドファンディングサイトをご紹介します。会員登録対象のサイトの参考にしていただければと思います。
サイト名/サービス名 |
事業者名 |
予定利回り(/年)例 |
特徴 |
LAETOLI株式会社 |
20%, 10% |
予定利率を上回る還元も複数ファンドで実績あり。 予定利回り12%→実績283.5%!! |
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TECRA株式会社 |
11%, 8% |
海外の物件も対象 現在まで、元本棄損発生無し |
|
株式会社良栄 |
7%, 6% |
1万円から投資可能 マスターリースによる家賃収入安定性向上も実施。 |
|
株式会社TSON |
7%, 6% |
匿名組合型、任意組合型それぞれのファンド実績あり。 中部地方の物件が多数。 |
|
株式会社五黄不動産 |
4-7% |
空き家再生プロジェクトなどストーリー性があるファンドを手掛ける |
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カチデベロップメント株式会社 |
10.5%, 10% |
土地開発プロジェクトファンドなど。開発施設テナントの投資家特典も。 |
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株式会社エボルゾーン |
8%, 7% |
運用期間1年未満のファンド多数 |
|
Mr.LAND株式会社 |
8% |
1万円から投資可能 |
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プロパティエージェント株式会社 |
10%, 5% |
都内レジデンス中心 2022/2時点で既に31件の実績 |
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株式会社グローベルス |
7%, 4.5% |
運用期間1年未満の案件多数 2022/2時点で既に30件以上の実績 |
|
株式会社リムズキャピタル |
7%, 6% |
地方創生を目的としたファンド |
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株式会社えんメディアネット |
8.3%, 7.8% |
1万円から投資可能 福岡の物件が中心 |
COZUCHI
COZUCHI は、LAETOLI株式会社が運営する不動産クラウドファンディングのサイトです。
2022/2時点で、募集中・運用中も含めて39件ものファンド実績を重ねており、非常に有名な不動産クラウドファンディングサイトとなっています。
ファンドを、インカムゲイン型(毎月の家賃収入を主な収益とするファンド。安定的。)とキャピタルゲイン型(物件の売却益を主な収益とするファンド。インカムゲイン型に比べハイリターンを得られる可能性がある)に分けており、幅広い投資家層を取り込んでいるサイトとなっています。
過去実績としては、キャピタルゲイン型で、なんと想定利回り12%に対して、実績283.5%を叩き出した実績もあり、予定以上に収益が得られた際に投資家に配分する設計にしているという面で好感が持てるサービスとなっています。
高頻度で新しいファンドの募集がされるので、まずはサイト登録をしておいて、新規募集ファンドが出たタイミングでファンド情報を精査して投資判断することが、おすすめです。
TECROWD
TECROWD は、TECRA株式会社が運営する不動産クラウドファンディングのサイトです。
新興国の物件を取り扱っているため、高い利回りのファンドが多く、新興国の物件でも良いのでハイリターンを狙う方に、おすすめです。
劣後出資比率は10%程度のものもあり、それなりにリスクヘッジされています。
一括借上げをする、日本の大企業と取引実績のある現地PM会社を使っているなど、リスクを落とす工夫も様々されています。
運用期間は、短期の数ヶ月のものから比較的長期の26ヶ月のものまで、様々あります。
新興国物件から、日本の都内物件、地方物件まで幅広く手掛けているので、まずはサイト登録をしておいて、新規募集ファンドが出たタイミングでファンド情報を精査して投資判断することが、おすすめです。
ちょこっと不動産
ちょこっと不動産 は、株式会社良栄が運営する不動産クラウドファンディングのサイトです。
ちょこっと不動産の特徴としては、劣後出資比率の高さが挙げられます。劣後出資比率35%、45%というファンドが存在し、その他にも、物件は都内物件を主な対象とする、マスターリース契約により空室リスクを抑える等、投資家元本棄損リスクをなんとしてでも落とそうという気概が感じられます。
運用期間は、数ヶ月程度のものが多く、長期で資金をロックしたくない投資家にも、おすすめと言えます。
ファンド募集は、先着順が多いようなので、募集を知った後にサイト登録をしても募集に間に合わなかったという事態を避けるため、まずはサイト登録をしておくことを、おすすめします。
TSON FUNDING
TSON FUNDINGは、株式会社TSONが運営する不動産クラウドファンディングのサイトです。
特徴としては、不動産クラウドファンディングとしては割合が高い匿名組合型に加えて、任意組合型のファンドも運営している点が挙げられます。
任意組合型は、出資者が不動産自体の一部を保持しているとみなされるため、相続税対策(不動産は同一価値の現金で保持している状態よりも相続時の評価額が下がる)として活用されることが多いスキームです。
また、運営会社が東証上場企業であるという点も、決算における会社の財務状況を確認できるという点で投資家にとってのメリットです。
また、投資対象不動産の市場価値を的確に判断するため、独自の不動産AIを活用しているというオリジナリティも持った会社になっています。
まとめ
本稿では、不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングについて、他の不動産投資商品と比較しながら、概要をご紹介しました。不動産クラウドファンディングは、以下のような特徴を持った不動産投資の仕組みです。
- 小口化された現物不動産への投資が可能(1万円から投資可能としている事業者複数)
- 優先劣後構造等により投資家側のリスクを抑えたファンド設計が可能
- ファンド運営をするためには不動産会社は国交省もしくは都道府県からの許認可が必要
投資特性を理解の上、資産のポートフォリオの1部に取り入れてみるのことをご検討されることを、おすすめします。